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抱きしめ合ったら脇汗

1年ごとテーマの変わる冬眠型もてらじ村民ブログ

冬季冬眠のお知らせ

 

 

皆様、日ごろ『抱きしめ合ったら脇汗』のご贔屓ありがとうございます。

 

といっても正直、贔屓されてる感じは今のところ全くしませんが、とにもかくにも、ありがとうございます。

 

2015年春から、もてらじ村民として参加させていただき、毎週日曜の更新ペースをなんとか保ちつつ、年の瀬を迎えることができました。

 

ですが、当ブログは冬季多忙のため、しばし眠りに入ります。

 

雪国にも梅の花がちらほらと咲く頃にまた、復帰する予定です。

 

春からは、このまま作り話を書いていくのか、方向転換するのか、それとも霞のようにスッと消えていくのか、まだ検討中でございます。

 

皆様、よいお年を。

おやすみなさい。

 

 

離婚記念日

あ、マスターありがと。


はい、ということでね、


みなさん改めましてこんばんは。


まさかこの中に知らない人はいないでしょうけれど、スナック「しがらみ」のママです。


今日はね、あたしの離婚記念日に多くの皆様に
お越しいただきまして、とっても嬉しいです。


あ、知らない方もいるんだったわね、

説明しておかなくちゃね。

 

そこにいるマスターが、あたしの離婚したダンナ、ってわけじゃないの。

彼は、言ってみれば店長さん。

ね。マスター。


あたしの前のダンナは、今、府中です。

そう、塀のなか。


府中って聞いて、分かるひとは分かると思うけど、

あそこは、初犯が落ちるとこじゃないわ。


彼が、その前にいたのは、網走。

あたしたち、まだその頃は結婚してたの。

 

でね、


彼、ある組織の鉄砲玉だったの。


いまどき、鉄砲玉なんて国宝級よ。業界では。

今の本物のやくざは見た目から中身まで、ほとんどカタギと変わらないもの。


そんな中であたしの前のダンナは不言実行、

抗争相手の親分のタマをとっちゃって。

 

でも今の世の中、鉄砲玉なんて気味悪がられるばかりだからね、

網走のオツトメを終えて出てきたら、

もうまわりに誰もいなかったの。


みんな、知らんぷり。

 

でもね、あたしは彼を愛していたから。

 

「このスナックを一緒にやろう、政ちゃん!」

て、言ったんだけど、


彼、悲しそうな顔してこう言ったの。

 

「塀の中に13年もいりゃあ、もう立派な塀の中の人だ。

お前は器量もいいし、美人だ。

俺みたいなひとごろしとくっついていたんじゃ、

ずっとクスブったまんまだろう。

お春。いいか。

俺と別れて、もう一度人生やりなおすんだ。

俺にはもう、世間がちょっとばかし、めまぐるしすぎる。」

 


泣いて止めるあたしに、一度振り返ったきり、

彼、行ってしまったの。

その足で、もう一度罪を犯すために。

 

彼が、再犯専門の府中刑務所に落ちたあと、

あたしたち、正式に離婚したの。

 

でもね、

この離婚は、あたしの愛した、前のダンナ、

政ちゃんからの贈り物だって、

あたしは思ってるの。

 

いま、こうして、たくさんのお客様に囲まれて、

お店を営業できているのは、そういうことだと思わない?


だから毎年、この日になると、

こうしてささやかなお祝いをしてるってわけ。


ざっと話せば、こんな短い話なのにね。


さ、というわけで、みんなグラスは持ったわね?


それじゃ、かんぱーい!

みんな、ありがとー!

 

テンゴク

 

 

「まあ、今さら失うものも無いから、話すけど。

あのさ、たい焼きでよく、頭から食べる派とか、尻尾から食べる派とかいう話、するでしょう?

僕の定番はね、握り潰して出たあんこをち○こに塗って、手を使わずに食べるやつなんだけどさ、

ある時ムリして、もうちょっと根本の方まで食べようとしたら、首の骨が折れちゃったんだ。」

 

話し終えると、目の前のイスに座って聞いていた、小柄な上に童顔のせいで、化粧が全然似合ってない仏頂面の女の子は、
意外にも可愛らしい笑顔を見せた。


笑顔は魅力的だったが、笑われたら何だか急に、間抜けすぎる自分に嫌気がさしてきた。

今すぐこの場から去りたい衝動をこらえて、とりあえず女の子にもココに来た経緯を尋ねると、

 

「あ、私はあのー…バイブを2つか3つくらい同時に使ってたんですけど、そのうちの一番おっきなやつを、もうちょっと強力にしたくて、先っぽ入れたまま配線いじってたら、感電しちゃって。」

 

 

…僕はひとつ大きな息をついてから上を見上げて、

あの世って意外にいい所だと思った。

 

 

 

おしりのお仕事

 

 

世の中が、おしりにオープンな世の中になってずいぶん経つ。

 

10年ひとむかし、なんて言うけれど、本当にそうだ。

10年前は、女が男にお尻をなでてもらうことが、ぜんぜん一般的じゃなかった。

市民権を得た、とでも言おうか。

 

町の大きなスーパーのテナントに、もみほぐし系のマッサージ店があったりするが、

それとほぼ同じくらいの割合で『おしり撫で』の店が無数にある。

 

基本的には‟おしりを撫でる側”は男性だったが、最近では男になでられるのに抵抗のあった同性愛者の方に向け、女性スタッフを常駐させるサービスもあったりする。

 

そのように異性を意識しているという面では、マッサージよりも多少はセクシュアル寄りなのかもしれない。

 

僕が小学生の頃にはすでに、おしり撫では定着しつつあったし、

一度親戚のお姉さんに、「色々疲れたからちょっと撫でてくれる?」

と言われて撫でたら、素質があるよ、うまいねと褒められた時からぼんやりと、

(将来はおしり系の仕事をしたいなぁ)と思うようになっていたので、

大学卒業後の進路に迷わずおしり系のサロンに就職した。

 

正直、自信はあった。

しかし、研修を終えて、お店に出てから一週間。

僕がおしりを撫でた女の人が、眉間にしわを寄せて何かを我慢していたり、涙を浮かべていたりすることが続いた。

 

そしてちょうど一週間目の最後のお客様に、ぼくは大声を出された。

「ふざけないで!そんな触り方して!」

お疲れさまでしたと声をかけたが、なかなかベッドから起きないなと思ったら、

急に立ち上がり、赤い顔をしてそう叫んだ。

 

「愛情込めたでしょ!!やめてよ!!」

 

「あなたね!愛情込めて触られたこっちの身にもなってよ!あんなに優しくなでて、さぞかしあなたの自己は満足したでしょうね!でもあなたに押し付けられた愛情を抱えて、私はこれから誰もいない家に帰るの!!!意味分かる!?それとも何なの?今後の責任とってくれるとでも?違うでしょ!ふざけないでよ!!ふざけないで!!!」

 

 

立ち尽くす僕は早々とバックヤードにさげられ、店長が平身低頭して謝っていた。

 

 後で聞いたが、店長は僕のおしりの撫で方が一部のお客様の逆鱗に触れることを知っていて、泳がせていたそうだ。

感情や愛情の加減というのが、おしりを撫でるプロとしての腕の見せ所であり、新人がお客様に泣かれるというのは、この業界では登竜門というか、必ず通る道らしい。

 

(女の人を泣かしてしまったけれど、やっぱりこれは、いい仕事だ。もっとおしりの事を知りたい)

 

そう思いながら僕は、帰路に就いた。

 

 

それでも僕は誰かの胸の中

 

 

 


もうどのくらい経っただろう


この前、世界が終りました


あっという間でした

生活の空気を残したまま、町並みを残したまま
人間はいなくなりました


大好きな妻と、僕だけを残して。

 

世界が終るまえ、僕は
(この人と、世界に2人だけでもいい)
とさえ思っていました。そのくらい大切な人でした

 

でも、本当に世界が終って、
僕たちはケンカばかりするようになりました


本当なら、こんなときこそ支えあえるはずの相手なのに
(もうこの人の顔しか見ることができないんだ)
と思えば思うほど


なんでだろう
大好きだったはずのあの人の顔を見るのも辛くなっていきました


次第に、昔好きだった人達がどんどん頭に浮かんできて
妻以外の女性のことばかり考えるようになりました


そして妻の方も、僕の顔を見ることはもちろん
そばにいることさえも苦痛に感じ始めているということが、手に取るように伝わってきます

 

まわりの環境なんかに関係なく愛し合っていたはずの僕ら2人は、
まわりの環境が変わったというきっかけだけで、
ついには別々に生きていくことを選択しました


僕と妻は、お互いを一度も振り返らず、反対の方向へと歩き去りました

 


もうどれくらい経っただろう


僕は、とても孤独です
孤独は、気が狂いそうになるほどつらい

それでも、ふたたび妻に会いたいとは、思いませんでした


僕が妻に感じていた、あの絶対の愛情や、絆は
いったい何だったのか

人の心変わりの恐ろしさが、現実として僕の中に現れ、
実感として体中に刻み込まれました


次第に僕は心を壊し、誰もいない薬局や病院に忍び込んでは
安定剤をバリバリと、ピーナッツみたいに食べるようになりました


食欲も失せ、荒んだ僕の心にひとつだけ確かに残ったものは

少なくとも僕は

誰か一人だけを愛せるほど純粋な心を持ち合わせてなんかいない

ということ

 

あれだけ愛したはずの妻
次々と頭に浮かんでくる、好きだった人や、好きだと言ってくれた人達

純情で一途だと思い込んでいただけの
ただの気の多い僕


いつの間にか僕は、地面にうずくまっていました

歯を食いしばって、自分を責めながら、
悔しくて、
悲しくて、
申し訳なくて、
車も人もいない道路にひとりヒザをついて、
頭をコンクリートにガンガン打ち続けました

 

 

その時でした


「もうやめな。死んじゃうよ」


顔を上げると、そこには、
妻と結婚することになったと告げた時に
「・・・うん。分かった」
とだけ言って去っていった女性が立っていました


「ごめんね。嘘なの」


「世界が滅んだのもね、全部嘘なの」

 

気がつくと、僕の周りには、知っている人たちがたくさんいました
みんな、申し訳ないという顔で、僕を見ていました

『なんで?』

僕は、放心状態で聞きました


すると彼女は、僕の頭を抱えて

「ごめんね。ほんとうにごめんね。
私が謝ったからってどうなることでもないんだけど、
ほんとうにごめんなさい」

と言って、身体を震わせて涙を流しました


いつの間にか僕は、彼女の服に顔を押し付けてしがみつき、
狂ったように大声で泣いていました


妻ではない人の胸の中は、信じられないほど僕を癒しました

 

 

世界が元に戻って、

僕は正式に、妻と離婚しました

 

とりあえず、再び僕は日常を生きています


生きることは、失っていくこと
得て、失っていくこと
妻と結婚していた頃の僕は、
なにもかもを未来に持っていこうとしていました

 

僕はきっとまた、女性を好きになる

その時には、その人の全部を請け負おうとするおごりは
もうやめようと思っています

 

 

 

それでも人生にはたまに楽しいことがあるから、それでいいのよ

 

 

 

 

 

 

「過去」はもう、決して変わることはありません。


じゃあ「未来」は変わるかというと、

そんな保障は誰もしてくれません。

 

もし保障すると言う人がいたら、信じたいですよね。

 

ただ

 

期待しても、傷つくのは自分です。

 

 


「未来」には、ただ希望を持つだけ。

それが「今」の為に必要なこともあるからです。

それでも期待はしません。


同時に、「未来」に期待しないということは

「未来への不安」にも、意味がなくなるということです。

 


期待することは、自己責任です。


就職・金儲け・恋愛・結婚・出産・長生き。

どんなことに期待するのも、すべて自己責任なんです。

 

 

・・・

 

 

はーい、じゃあこれで
今日の1年3組のホームルームはおしまいでーす。
みんなにはちょっと難しかったかな?

 

はい先生!

 

ん?なあに?

 

えっとね。ボクにはよくは分からなかったんだけどね、
たぶん先生は、つらいことがいっぱいあったんだとおもう。

 

・・・ふふ。君はきっと、いい男になるわね。
15年後に君のとなりにいる女の子が、先生はうらやましいわ。

さ、今日は光化学スモッグ注意報が出てるから
みんな寄り道しないでまっすぐ家に帰るのよー

 

はーい!
はーい!
はーい!

 

 

 

 

じゃがいもはたべもの 芽には毒

 

 


青酸カリを盛る勇気なんか無いから、
代わりにアーモンドばかり食べさせた。


旦那は、ニキビだらけになった。

 

旦那の事は、好きだし、嫌いだ

 

(この人しか一緒に暮らしてもいいと思える人はいない)

そう思う気持ちがある反面


(なんで私のそばにいるんだろうこの人)


と、ふと頭にきたりすることが多い

一緒にいるだけでイライラする事が多い

 

でもいなくなったら淋しい

他がみつかればいいのかもしれないけれど
もう一から探すのがめんどくさい

もう長いこと
男ウケするようなモードに入ってないから
また男たちに見せれるレベルになるかどうか
自信も湧かないし

 

旦那には依存してるんだろうけど
依存されるとうっとおしい

 

自分自身が嫌いになりそうな時は
たいてい旦那のせいにして暮らしてる

 

とても大切な存在だけど
消えて無くなってほしいとも思う

死んで欲しくないけど
消えてほしい

 


殺意と慈愛に満ちた気持ちのまま

おそらくこれからも私と彼の関係はだらだらと続く

 

 

 

あとづけ

 






僕は死んだ




新聞の隅っこに記事が載った

“どうして気づいてあげられなかったのか。確かにサインはあった”

みたいな事が書いてある


僕は、鼻で笑った



サインをたくさん出したら出したで
かまってちゃんだとウザがるくせに
 

こどものオキモノ おとなのワスレモノ

 

 

「ねぇ、おねーちゃん。びっちってなあに?」

 

『…知りたい?』


「うん」


『おねぇちゃんみたいな人のことだよ』

 

「ふぅん」

 

 


それからしばらくして、おねーちゃんは死んじゃった


最後に病院で会ったとき

『ねぇコータ、もうびっちって言葉、使っちゃだめだよ?
親戚のみんな、おねぇちゃんのこと思い出して
イヤな気持ちになっちゃうから。
みんな、おねぇちゃんのことあんまり好きじゃないから』


『ほら…約束』


おねーちゃんの小指は、カサカサしてた

 

僕は今も、おねーちゃんを忘れていない

おねーちゃんの病気のことも、なんとなく分かってきた

お父さんもお母さんも親戚のおじさんも、その話が嫌いみたいだってことも分かってきた

おねーちゃんは確かにいたのに、最初からいなかったみたい


僕は少しずつ、親戚のみんなの事が嫌いになった


言うことを聞かない僕を、みんなも嫌いになったみたいだった

 


誰かが

“素直でいい子だったのに”

と言った

 

“あの子のせいよ”

と言った


僕にはそれが、おねーちゃんのことだって分かった

 

叫んで暴れた僕を、大人たちは力ずくでおさえて、殴った

 

僕は走って近くの神社まで逃げた

悔しくて涙が出た

 

 


僕はその日
神社に大切な僕を置いて行こうと決めた

 

 

 

 

 

比較のマホウ

 

 

「トゥワハ!トゥワハ!」

 

「ブヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

 

このキノコ工場では、

梱包できないほどに成長しすぎた巨大エリンギが収穫されると必ず誰かが

ナイジェリア出身のトゥワハの名前を呼びながらエリンギを股間にあてる。

 

毎度、凝りもせず、爆笑だ。

 

不法滞在のアフリカ人のなかでも一番ちんこがでかいと言われていた当のトゥワハは、いつも苦笑いして、「チガウ!サム!サム!」と、別のアフリカ人の方が自分よりちんこがでかいんだと、いじられを回避しようとするのが、お決まりのパターンだ。

 

 

おかしい。

僕は、こんな職場で働くために、大学を出たんだろうか。

 

更に、おかしいのは、僕はこの環境に、

少し居心地がよくなってきている気がすることだ。

 

社長はハンドルを斜めにしないと真っすぐ進まない

ボロボロのブルーバードに乗っている。

 

先日も他会社との合同飲み会で、よその社長たちにズボンをおろされて

一升瓶を直接アナルに入れられて日本酒を直腸で飲まされていた。

 

「いやー、あれは効くぞ。べろべろになっちまった」

 

だそうだ。

 

社長からしてそれだから、梱包ルームにいるババアたちにも当然、品などない。

新卒で入ってくる若い男なんて僕しかいなかったからかもしれないが、

僕に対する下ネタにも、遠慮がない。

 

こないだなんて、ウメコ(本名かどうか不明)と呼ばれてる、少なく見積もっても50代後半のババアに、密室のキノコ栽培室で笑いながらフェラチオされそうになった。

 

もはや下ネタの域を超えている。

 

が、彼女のいない僕が、工場と自宅アパートの往復だけの生活をしていて、関わる女といえばババア’sしかおらず、未遂とはいえ性のアプローチをかけられるとどうなるのか。

 

気づくとババア’sを見つめている自分がいるのだ。

いけない。正気を保て。僕はまだ22だ。

 

そんな中、この小さなキノコ工場の経理を、ずっと一人で担当してきたジジイの体力が低下してきたということで、事務員をもう一人雇うことにしたらしい。

 

10時から3時までのパートタイムシフトで入ってきた女性は、

松下さん、42歳。

 

(わ、若い!!!)

 

それが、僕の第一印象だった。

ババア’sにすっかり見慣れた上に、ウメコのせいで性が暴走しかけてる僕にとっては、年が20歳くらい上な事実よりも、ババア達よりも20歳くらい若いことの方が、はるかに重要なことだった。

 

 

恋を、した。

 

 

 

 

 

 

カルピス

 

 

 

授業中、僕から白い液体が飛びだした。

それは生きているみたいに、ずうっと伸びて、あの娘の口に入っていった。

 

まわりのみんなは、見えていないみたい。

黒板を見たり、ノートを見たりしてる。

 

そして、あの娘の喉が(コクッ)と、動いた。

 

その日から僕は、どんな時も、あの娘が今どの方向にいるのかが分かる。

小さい時も、大きく膨らんだ時も、必ず勝手に、あの娘がいる方向をピンと指し示すようになったからだ。

朝、下腹部に鈍痛が走る時は必ず、あの娘の家と反対の方を向いて寝ていて、お尻から先っぽが出ていて、イヤというほど、タマを圧迫している。


僕は、あの娘に、そんな状況を話すことにした。

放課後、あの娘を外に呼び出す。


説明し終わると彼女は少し笑って、
綺麗な一本背負いを僕にキメてから、

「やっぱり、カルピスって原液が一番だから」

と言い、僕の手を引いた。

 

 

秋のホラーシリーズ1~最終話~

 

 

その時だった!


お料理教室で習ったばかりの

ペンネアラビアータを作れば作るほど

私には無いはずのキンタマが猛烈にカユいのだ!

 

必死で空中をゴシゴシとコスっていると、

私の頭の中には、


“レタスandエキノコックス


という自作の歌しか浮かばなくなる!

 

「ああ!どうしよう!」

 

混乱した私にはもう、

のりピーとピーコとパー子の区別がつかない!


あれ!?

のりピーの旦那の服がピンクで

林家ぺーは映画を解説して逮捕されたオカマだから・・・

 

おすぎはプロサーファーだ!!!

 

すべてが分かった私はすぐさまユニクロの服を着た!


まんだらけー!まんだらけー!」


般若心経を必死に唱える私!

 

ドンドン!

ドンドン!

 

遅かった!

私の金玉袋の緒は切れ、

なべやかんティファール化を始めたのだ!

 

もうだめだ!

 

「い、稲垣吾郎がアクセル踏んじゃうっ!!!」

 

 


目が覚めた


「はぁ  はぁ」


よかった


夢か

 

 

トントントントン


お母さんが階段を上がってくる音だ


「はぁ  はぁ」


いつもの朝だ

 

ガチャッ

 

 


「キャーーーーー!!!!!」

 


お母さんの島袋が

キラリと光っていた

 

おさとう

 


「わしにも、女の子の時代があったですよ。

裕福じゃなかったけんど、今はそれで良かったと思ってるです。

ずーっとお金があったら、なにが幸せなんだかも

分からなかったじゃねえかと思いますよ」


おばあちゃんはそう言って、

炊きたてのほかほかご飯を、砂糖たっぷりで甘辛く煮付けた鰯と一緒に

もぐもぐと美味しそうに食べた。

 

「なるほど・・」

とだけなんとか反応したが、宮下洋太は言葉につまる。

洋太の横で、島本由美子が泣いているのが分かったからだ。


涙の理由も、洋太には分かった。

島本由美子は高校生の今でこそ、普通の女の子だ。
なんなら、男子にも結構人気がある。
腰近くまである髪の毛は、黒と青を混ぜたような、思わず見とれてしまうような色をしているし
あまり主張はしないが、たまに笑うとどこか寂しそうで嬉しそうな不思議な笑顔をする。
まわりの男どもに言わせると、なんだか守ってあげたくなるそうだ。

しかし、由美子は小学生の頃、誰からも守られていなかった。
特に、親から。

当時から長い髪は、いまと違って艶はなく、しらみがたっぷりと棲んでいた。
昭和の戦争の頃の話ではない。
今からほんの数年前、スマホだって余裕で存在した時代の話だ。

小学校が一緒だった洋太が、高校の弓道部で再会する前に、
最後に由美子を見たのはたしか小学5年だったと思う。

いつも、ボロボロの服装で、2つ下の妹と一緒に登下校していた。
由美子に友達は、いなかったんじゃないかと思う。
むしろ、いじめの対象だった。

当時担任だった松田先生は、まだ20代で、保護者会に参加してきた洋太の母からも
「有名大学のラグビー部だったわりには、ちょっと頼りないわね」
と言われていた若者で、由美子をどうしていいかと困惑しているのは明らかだった。

 

由美子の両親には、子供を育てる能力が、なかった。

 

「由美子と高校で同じ部活になった」と、洋太が夕食の時に口にすると
「えっ!?そうなの?そうかーあの姉妹かぁ。私もよく覚えてるよ。あの時はね…」
と、母が小学校当時の由美子と、由美子の親のことをあれこれと喋り始めた。

要約すると、
父親と母親の間にはDVという問題があり、
母親個人にはパニック障害という問題があり、
親と姉妹の間にはネグレクトという問題があり、
家族には貧困という問題があった。ということだった。


その後、親元から行政により施設に引き取られたのが小学5年の時。
つまり、洋太が最後に由美子を見た時だということが分かり、
時系列と事情がつながった。

ぼんやりではあるし、小5から中学卒業までどう過ごしたかは知らないが
そんな風に由美子の全体像を知っている洋太が

冒頭のおばあちゃんの言葉を由美子が聞き、
幼き自分や妹の貧困を思い出していることを察知できないわけはなかった。


弓道部の夏合宿初日。
校外顧問のおじいちゃん先生の自宅道場
みんなと別行動で、夕方まで先生の奥さんのお手伝いを命じられた洋太と由美子。
3人でとった昼食の席でのあの涙が、今思えば始まりだったのかもしれない。

 

 

 

 

 


続く?

 

 

 

 

 

It’s easy as pie.

 

 

あのさ、覚えたばかりの言葉をやたら使いたがる男っていない?

ほら、あの彼、いるでしょう。

ちょっと知的レベル高いって自分では思っているけど、マイルドヤンキーっていうの?その域をぜんぜん出てないあの人、、、名前なんだっけ?

あ!そうそう!それだ!レオン!あははは!

「俺のことレオンって呼んで」っていう人!本名渡辺だったよね。渡辺新太郎。

レオンって・・・色々どうしようもない感すごいよね、なんか。

でね、

そのレオンこと新太郎がね、こないだのキャンプイベントあったでしょう。

なんかアウトドア好きみたいでね、やたらはりきってて。

そこでね、なんだか知らないんだけど、ことあるごとに言ってたのが、

「It’s easy as pie!」

って。

なんかね、パイを食べるくらい簡単みたいな感じっていうか、

朝飯前だよ!みたいな意味らしいんだけどさ。

もうね、、、しつこくて。とにかく。

知らない言葉だから、一回くらいはさ「それ、どんな意味?」とか聞くでしょ?

そのやりとり自体は、全然いいじゃん。

でもさ、あんまりしつこいのって、辛くなってこない?

だって、テントたてるのも、火を起こすのも、

とにかくもう、ふたこと目には「It’s easy as pie!」って。

最後のほうは私たちの中で『パイ将軍』ってあだ名ついてたもん!あはは!

「そもそも日本人の彼はパイを食べる習慣ないでしょ!」

ってみんなツッコミ入れてたよ。

あー。笑ったよ。ほんと。

だから、それも含めて、楽しいイベントだったのかもしれない。

彼には私たち感謝しなきゃいけないのかもねー。

あ、そうそう。そういえばさ、

私たちは彼とは距離を置いてたけど、女子のグループの中には

彼と初対面の人たちもいてさ。

どんな距離感かまだつかめてないから、やたらとおだてててさ。

キャバクラさしすせそ、フル活用!みたいな感じで。そうそう。

なんだっけ、

≪さ≫すがー

≪し≫らなかったー

≪す≫ごーい

≪せ≫ンスあるよねー

≪そ≫うなんだー

だっけ?

そしたらさ、もうまんまと。まんまと、って感じだったよね?

こっちが見てられないくらい調子のりまくっちゃってたもんね、レオンこと新太郎は。あははは!

はー。おもしろ。

もう、あんたの攻略がなによりも一番、It’s easy as pie!!!

 

 

ねだる

 

 

 

 

「人はいつだって、ないものをねだるってホントだよね」




このお姉さんは、ラブホテルの中でしか本音っぽいことを喋らないので、僕は話の腰を折らないよう、黙って聞いている




「君は知ってる?ねだるっていう漢字。強く請うって書くんだよ」






光の遮られたここでは分からないけれど
おそらく外は強い西陽に赤く照らされながら風になびくすすきと

うろこ雲を散りばめた秋の青空が広がってることだろう