比較のマホウ
「トゥワハ!トゥワハ!」
「ブヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
このキノコ工場では、
梱包できないほどに成長しすぎた巨大エリンギが収穫されると必ず誰かが
ナイジェリア出身のトゥワハの名前を呼びながらエリンギを股間にあてる。
毎度、凝りもせず、爆笑だ。
不法滞在のアフリカ人のなかでも一番ちんこがでかいと言われていた当のトゥワハは、いつも苦笑いして、「チガウ!サム!サム!」と、別のアフリカ人の方が自分よりちんこがでかいんだと、いじられを回避しようとするのが、お決まりのパターンだ。
おかしい。
僕は、こんな職場で働くために、大学を出たんだろうか。
更に、おかしいのは、僕はこの環境に、
少し居心地がよくなってきている気がすることだ。
社長はハンドルを斜めにしないと真っすぐ進まない
ボロボロのブルーバードに乗っている。
先日も他会社との合同飲み会で、よその社長たちにズボンをおろされて
一升瓶を直接アナルに入れられて日本酒を直腸で飲まされていた。
「いやー、あれは効くぞ。べろべろになっちまった」
だそうだ。
社長からしてそれだから、梱包ルームにいるババアたちにも当然、品などない。
新卒で入ってくる若い男なんて僕しかいなかったからかもしれないが、
僕に対する下ネタにも、遠慮がない。
こないだなんて、ウメコ(本名かどうか不明)と呼ばれてる、少なく見積もっても50代後半のババアに、密室のキノコ栽培室で笑いながらフェラチオされそうになった。
もはや下ネタの域を超えている。
が、彼女のいない僕が、工場と自宅アパートの往復だけの生活をしていて、関わる女といえばババア’sしかおらず、未遂とはいえ性のアプローチをかけられるとどうなるのか。
気づくとババア’sを見つめている自分がいるのだ。
いけない。正気を保て。僕はまだ22だ。
そんな中、この小さなキノコ工場の経理を、ずっと一人で担当してきたジジイの体力が低下してきたということで、事務員をもう一人雇うことにしたらしい。
10時から3時までのパートタイムシフトで入ってきた女性は、
松下さん、42歳。
(わ、若い!!!)
それが、僕の第一印象だった。
ババア’sにすっかり見慣れた上に、ウメコのせいで性が暴走しかけてる僕にとっては、年が20歳くらい上な事実よりも、ババア達よりも20歳くらい若いことの方が、はるかに重要なことだった。
恋を、した。