抱きしめ合ったら脇汗

1年ごとテーマの変わる冬眠型もてらじ村民ブログ

こどものオキモノ おとなのワスレモノ

 

 

「ねぇ、おねーちゃん。びっちってなあに?」

 

『…知りたい?』


「うん」


『おねぇちゃんみたいな人のことだよ』

 

「ふぅん」

 

 


それからしばらくして、おねーちゃんは死んじゃった


最後に病院で会ったとき

『ねぇコータ、もうびっちって言葉、使っちゃだめだよ?
親戚のみんな、おねぇちゃんのこと思い出して
イヤな気持ちになっちゃうから。
みんな、おねぇちゃんのことあんまり好きじゃないから』


『ほら…約束』


おねーちゃんの小指は、カサカサしてた

 

僕は今も、おねーちゃんを忘れていない

おねーちゃんの病気のことも、なんとなく分かってきた

お父さんもお母さんも親戚のおじさんも、その話が嫌いみたいだってことも分かってきた

おねーちゃんは確かにいたのに、最初からいなかったみたい


僕は少しずつ、親戚のみんなの事が嫌いになった


言うことを聞かない僕を、みんなも嫌いになったみたいだった

 


誰かが

“素直でいい子だったのに”

と言った

 

“あの子のせいよ”

と言った


僕にはそれが、おねーちゃんのことだって分かった

 

叫んで暴れた僕を、大人たちは力ずくでおさえて、殴った

 

僕は走って近くの神社まで逃げた

悔しくて涙が出た

 

 


僕はその日
神社に大切な僕を置いて行こうと決めた