抱きしめ合ったら脇汗

1年ごとテーマの変わる冬眠型もてらじ村民ブログ

あの日に置いてきた

 

 

 

ギターといえば、まだエレキではなかった


アコギなんて言葉もまだない頃
僕はアコギをもらった


ポロン


よく
「女の子にモテたくて始めたんですよ、よくあるやつです。そしたら何時の間にかキャリアばかり長くなってしまって…」

なんて
ミュージシャンのインタビューによくあるけど


動機は同じでも
そこまでの情熱すら持てない僕は

ただ
アコギをポロポロ鳴らすだけで
コードを覚える気すら無かった

 

 


ユミちゃんは
そうして何年も放置されていた僕のアコギを弾いた

 

 

美人ではないかもしれないけど
肌が白くて
ミッキーマウスのマネが得意という、ちょっとあざとくて、

でも可愛らしい娘だった

 

ユミちゃんが弾いた僕のアコギは
急に魅力的になったように思えた


だから僕は
アコギをプレゼントした


「ホントにいいの?」


そう何度も繰り返して
とても喜んでくれた

 

 

ユミちゃんの事が好きだったのかどうか
僕は今でもよく分からない

でもセックスはしたし
一緒に花火もした

 

ユミちゃんは
「あたしたちって、どういう関係なの?」
と聞いていた

何て答えたかは覚えてない

 

 

 


一瞬の季節だった
ユミちゃんは他の誰かと結婚したらしい


なんでもないそんなあの頃を
僕はふいに思い出していた

 

 

 

 


プルルル…


プルルル…

 

 

 

「あ、もしもし?母さん?オレだよ、オレ…うん、実はさ…」

 

 

ワンルームの仕事場に無数に横たわる携帯電話の中

僕は今日も一日中電話をかけまくる

 

その携帯電話の一つを横目に見ると


ユミちゃんと連絡を取り合っていた
あの頃の携帯電話に似てる気がした