アーチェリーが面白い
アーチェリーは面白いのである。
元も子もないことを言ってしまえば、どんなスポーツだって
『自分にハマってさえしまえば』面白いものなのだ。
僕はたまたま、アーチェリーというスポーツにハマった。
ハマったと言っても、『スポーツとして楽しい』という意味でのハマる、ではなくて
(自分の弱い体でも、強い人たちと対等に戦いができるかもしれない!)
という、
『両脚を悪くした僕が何か勝負事にチャレンジしたい気持ち』が、
アーチェリーという競技の特徴に、ハマったのである。
ポイントは、同じ土俵での勝負、という点だった。
例えば、車いすバスケット。
この競技をご存じの方は、たくさんいらっしゃることと思う。
井上雄彦の漫画『リアル』なんかでもお馴染みだ。
すごく激しくて、障害者競技の中では盛んなスポーツだけれど、
バスケットと、車いすバスケットが同じコートで勝負することはできない。
座ってる人と立ってる人では高さが違いすぎるし、そもそもルールが違う。
車いすテニス、はどうだろう。これは高さが関係ない。
しかし、僕はアーチェリーを始める前に車いすテニスに挑戦した時期もあったのだけれど、始めて1日目に知った事実があった。車いすテニスは、2バウンドまでOKなのである!
つまりこれもルール自体が違うのだ。普通にテニス愛好家の方と同じ土俵で戦っているようで、ハンデ戦のような形になってしまう。
他には、障害者独自のスポーツもたくさんある。ゴールボールとか。
でもあくまで障害者のためのスポーツ、という意味合いが強いので、一般の愛好家がいない。いたとしてもかなーり少ない。だからどうしても、世界が狭くなりがちになってしまう。
うーん。。。何か一般の大会にも出られるような、ボーダーレスなスポーツはないのか。。。と思っていたら、アーチェリーがあったのである。
アーチェリーはびっくりするほど、ボーダーレスな競技だった。
とにかく、当たれば勝ちなのだ。
点数が一点でも多い方が勝ちという、シンプルすぎるやつだった。
体のハンデとか、関係あるようで、ない。
仮に、あなたが事故か何かで『利き手である右手を失った』としましょう。
この動画をちょっと見て欲しい・・・
口で引いてる!!
(いいんだこれ!え?すごくない?)と思った。
ちなみに去年、和歌山の障害者国体に出場させてもらった時、僕のカテゴリーでぶっちぎりの点数でチャンピオンになった人も、口で引く人だった・・・
さらに仮に。
あなたの残った左腕まで、借金のせい、もしくは妖怪の仕業かなんかで、もがれたとしましょう。つまり両腕がなくなってしまったら・・・
再びご覧ください。
えええええええええ!!!
足で射ってる!!何が起きてるの?
そう、アーチェリーとは、とにかく色々関係ない、問答無用なスポーツだった。
当たれば勝ちなのだ。点数が高ければそれでいいのだ。
力の弱い女性でも、還暦をとっくに過ぎたばあさんじいさんでも、自分の力や体に合った道具を使えば、スポーツとしての勝負を楽しむことが普通にできちゃうのである。
希望があると感じた。
こんな男がいたとしよう。
小学生の頃から校内ヒエラルキーの上部に位置し、3時にはスイーツが出てくる家庭に育ち、有名私立大学卒で、年収800万、彼女に困ったことはなく、心身ともに健康で夜も絶倫。
そんな奴に、
小学生の頃から校内ヒエラルキーの下層に位置し、3時にはスイーツなんか出てこないので自分で小麦粉を水に溶いてフライパンで焼いてマヨネーズをかけて各々勝手に喰う家庭に育ち、なんちゃってミッション系短期大学卒で、年収100万前後のぶっちぎり貧困層、彼女に困ったことしかない、心身ともに不健康気味で仮性包茎の僕が・・・勝てるチャンスがあるかもしれない!
そこに希望以外の何があると言うのでしょう。
この異常なまでのボーダーレスさは、面白みしかない。
しかもマイナースポーツすぎて、『小さい頃からやってました』勢に出会うことが、ほぼ無い!
遅れをとった感が、全然ないのもいいところである。
ただ逆に、マイナーすぎて、誰かと一緒に楽しむという共有感は、薄い。
原液が小さじ1杯しか入っていないカルピスより薄い。
だから、誰かと一緒にやりたくて、今年からオトナ向けのレッスンを始めた。
オトナ向けと言っても、アーチェリーの道具を工夫して性具にして夜な夜なハアハアとレッスンをするとか、そういう変態方向のオトナ向けではない。
大人になって、ちゃんと遊ぶ機会って、減ってくる。
だってココは、生活に追われるだけになりがち大国ニッポンである。
だから、競技として部活のように、選手を育成するのがレッスンの目的ではない。
大人の遊び、人生の彩り、というように、アーチェリーを通して日々を楽しむことを重点としたレッスンをしたいと思ったのだ。
例えば、アーチェリーにも年に数冊発行される、専門の機関紙がある。
「ハッキリ言って、サッパリ分からん」
と、誰しもが言うだろう。だってあくまで、本気でアーチェリーの上を目ざす、という人に向けての本なのだから、こういうのはどうしても排他的になりがちなのはしょうがない。同じアーチェリーをするでも、目的が全然違うのだ。
アーチェリーのようなマイナーすぎるスポーツは、
趣味として、そして紳士の遊びとして楽しむ層がもっともっと増えないと、どうしようもないと思っている。
せっかくいいところがあるのに、アーチェリーを体験せずに死ぬ人がほとんどだろう。
もったいない。
(つまらない、自分に合っていない)と感じる人も、そりゃたくさんいるだろうけれど、楽しいかもしれないし、やってみたら天才かもしれないのだ。
興味があったら、是非僕のレッスンを受けに信州に来てください。自分で言うのもなんだけれど、アーチェリーを始める最初の入口としては、なかなか悪くないと思っております。選手としても指導者としても、全然まだまだではあるんですが、楽しんでもらえるよう精進してます。はい。一応ウェブサイトを載せておきますね。
宣伝になっちゃった・・・
最後に、まったくアーチェリーを知らない人への豆知識的な情報をちょっとだけ。
●「今、世界で一番アーチェリーが強い国はどこでしょう」
と質問されたら、あなたは何と答えますか?
答えは、韓国。厳密には色々あるだろうけど、ほとんどのアーチェリーやったことある人が韓国と答えると思いますよ。卓球で言うところの中国みたいな感じと言えば分かりやすいでしょうか。
●アーチェリーの弓は、実は2種類あります
1つ目は【リカーブ】という弓。皆さんが想像するのは多分こっち。
(映像は韓国のトッププレーヤーのキ・ボーベさん)
2つ目は【コンパウンド】という弓。世界ではこちらが多数派。ランボー2でスタローンが使ってるのはこちら。
(よく見ると、弦が3つくらいあるの分かります?あと上下に滑車があります。リカーブよりも精度が高いのが特徴です)
●実はアーチェリーには種目がいくつかあります
・アウトドアターゲット(屋外で的に向かって射って競います)
・インドア(体育館など屋内で的に向かって射って競います)
・フィールド(山林に設置された的を射って競います)
・スキーアーチェリー(クロスカントリースキーとアーチェリーを合わせたやつ)
・3Dアーチェリー(発泡スチロール製の的に射って、鹿や熊の形で、急所に近いほど高得点)
その他にも、フライトアーチェリーや、ホースバックアーチェリーというものもあります。結構いっぱいあるでしょう?
はい。
ということで、どこまで書いていいのか分からないので、今回はこの辺で。
また偶数の日曜日に。ごきげんよう。