抱きしめ合ったら脇汗

1年ごとテーマの変わる冬眠型もてらじ村民ブログ

比較のマホウ

 

 

「トゥワハ!トゥワハ!」

 

「ブヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

 

このキノコ工場では、

梱包できないほどに成長しすぎた巨大エリンギが収穫されると必ず誰かが

ナイジェリア出身のトゥワハの名前を呼びながらエリンギを股間にあてる。

 

毎度、凝りもせず、爆笑だ。

 

不法滞在のアフリカ人のなかでも一番ちんこがでかいと言われていた当のトゥワハは、いつも苦笑いして、「チガウ!サム!サム!」と、別のアフリカ人の方が自分よりちんこがでかいんだと、いじられを回避しようとするのが、お決まりのパターンだ。

 

 

おかしい。

僕は、こんな職場で働くために、大学を出たんだろうか。

 

更に、おかしいのは、僕はこの環境に、

少し居心地がよくなってきている気がすることだ。

 

社長はハンドルを斜めにしないと真っすぐ進まない

ボロボロのブルーバードに乗っている。

 

先日も他会社との合同飲み会で、よその社長たちにズボンをおろされて

一升瓶を直接アナルに入れられて日本酒を直腸で飲まされていた。

 

「いやー、あれは効くぞ。べろべろになっちまった」

 

だそうだ。

 

社長からしてそれだから、梱包ルームにいるババアたちにも当然、品などない。

新卒で入ってくる若い男なんて僕しかいなかったからかもしれないが、

僕に対する下ネタにも、遠慮がない。

 

こないだなんて、ウメコ(本名かどうか不明)と呼ばれてる、少なく見積もっても50代後半のババアに、密室のキノコ栽培室で笑いながらフェラチオされそうになった。

 

もはや下ネタの域を超えている。

 

が、彼女のいない僕が、工場と自宅アパートの往復だけの生活をしていて、関わる女といえばババア’sしかおらず、未遂とはいえ性のアプローチをかけられるとどうなるのか。

 

気づくとババア’sを見つめている自分がいるのだ。

いけない。正気を保て。僕はまだ22だ。

 

そんな中、この小さなキノコ工場の経理を、ずっと一人で担当してきたジジイの体力が低下してきたということで、事務員をもう一人雇うことにしたらしい。

 

10時から3時までのパートタイムシフトで入ってきた女性は、

松下さん、42歳。

 

(わ、若い!!!)

 

それが、僕の第一印象だった。

ババア’sにすっかり見慣れた上に、ウメコのせいで性が暴走しかけてる僕にとっては、年が20歳くらい上な事実よりも、ババア達よりも20歳くらい若いことの方が、はるかに重要なことだった。

 

 

恋を、した。

 

 

 

 

 

 

カルピス

 

 

 

授業中、僕から白い液体が飛びだした。

それは生きているみたいに、ずうっと伸びて、あの娘の口に入っていった。

 

まわりのみんなは、見えていないみたい。

黒板を見たり、ノートを見たりしてる。

 

そして、あの娘の喉が(コクッ)と、動いた。

 

その日から僕は、どんな時も、あの娘が今どの方向にいるのかが分かる。

小さい時も、大きく膨らんだ時も、必ず勝手に、あの娘がいる方向をピンと指し示すようになったからだ。

朝、下腹部に鈍痛が走る時は必ず、あの娘の家と反対の方を向いて寝ていて、お尻から先っぽが出ていて、イヤというほど、タマを圧迫している。


僕は、あの娘に、そんな状況を話すことにした。

放課後、あの娘を外に呼び出す。


説明し終わると彼女は少し笑って、
綺麗な一本背負いを僕にキメてから、

「やっぱり、カルピスって原液が一番だから」

と言い、僕の手を引いた。

 

 

秋のホラーシリーズ1~最終話~

 

 

その時だった!


お料理教室で習ったばかりの

ペンネアラビアータを作れば作るほど

私には無いはずのキンタマが猛烈にカユいのだ!

 

必死で空中をゴシゴシとコスっていると、

私の頭の中には、


“レタスandエキノコックス


という自作の歌しか浮かばなくなる!

 

「ああ!どうしよう!」

 

混乱した私にはもう、

のりピーとピーコとパー子の区別がつかない!


あれ!?

のりピーの旦那の服がピンクで

林家ぺーは映画を解説して逮捕されたオカマだから・・・

 

おすぎはプロサーファーだ!!!

 

すべてが分かった私はすぐさまユニクロの服を着た!


まんだらけー!まんだらけー!」


般若心経を必死に唱える私!

 

ドンドン!

ドンドン!

 

遅かった!

私の金玉袋の緒は切れ、

なべやかんティファール化を始めたのだ!

 

もうだめだ!

 

「い、稲垣吾郎がアクセル踏んじゃうっ!!!」

 

 


目が覚めた


「はぁ  はぁ」


よかった


夢か

 

 

トントントントン


お母さんが階段を上がってくる音だ


「はぁ  はぁ」


いつもの朝だ

 

ガチャッ

 

 


「キャーーーーー!!!!!」

 


お母さんの島袋が

キラリと光っていた

 

おさとう

 


「わしにも、女の子の時代があったですよ。

裕福じゃなかったけんど、今はそれで良かったと思ってるです。

ずーっとお金があったら、なにが幸せなんだかも

分からなかったじゃねえかと思いますよ」


おばあちゃんはそう言って、

炊きたてのほかほかご飯を、砂糖たっぷりで甘辛く煮付けた鰯と一緒に

もぐもぐと美味しそうに食べた。

 

「なるほど・・」

とだけなんとか反応したが、宮下洋太は言葉につまる。

洋太の横で、島本由美子が泣いているのが分かったからだ。


涙の理由も、洋太には分かった。

島本由美子は高校生の今でこそ、普通の女の子だ。
なんなら、男子にも結構人気がある。
腰近くまである髪の毛は、黒と青を混ぜたような、思わず見とれてしまうような色をしているし
あまり主張はしないが、たまに笑うとどこか寂しそうで嬉しそうな不思議な笑顔をする。
まわりの男どもに言わせると、なんだか守ってあげたくなるそうだ。

しかし、由美子は小学生の頃、誰からも守られていなかった。
特に、親から。

当時から長い髪は、いまと違って艶はなく、しらみがたっぷりと棲んでいた。
昭和の戦争の頃の話ではない。
今からほんの数年前、スマホだって余裕で存在した時代の話だ。

小学校が一緒だった洋太が、高校の弓道部で再会する前に、
最後に由美子を見たのはたしか小学5年だったと思う。

いつも、ボロボロの服装で、2つ下の妹と一緒に登下校していた。
由美子に友達は、いなかったんじゃないかと思う。
むしろ、いじめの対象だった。

当時担任だった松田先生は、まだ20代で、保護者会に参加してきた洋太の母からも
「有名大学のラグビー部だったわりには、ちょっと頼りないわね」
と言われていた若者で、由美子をどうしていいかと困惑しているのは明らかだった。

 

由美子の両親には、子供を育てる能力が、なかった。

 

「由美子と高校で同じ部活になった」と、洋太が夕食の時に口にすると
「えっ!?そうなの?そうかーあの姉妹かぁ。私もよく覚えてるよ。あの時はね…」
と、母が小学校当時の由美子と、由美子の親のことをあれこれと喋り始めた。

要約すると、
父親と母親の間にはDVという問題があり、
母親個人にはパニック障害という問題があり、
親と姉妹の間にはネグレクトという問題があり、
家族には貧困という問題があった。ということだった。


その後、親元から行政により施設に引き取られたのが小学5年の時。
つまり、洋太が最後に由美子を見た時だということが分かり、
時系列と事情がつながった。

ぼんやりではあるし、小5から中学卒業までどう過ごしたかは知らないが
そんな風に由美子の全体像を知っている洋太が

冒頭のおばあちゃんの言葉を由美子が聞き、
幼き自分や妹の貧困を思い出していることを察知できないわけはなかった。


弓道部の夏合宿初日。
校外顧問のおじいちゃん先生の自宅道場
みんなと別行動で、夕方まで先生の奥さんのお手伝いを命じられた洋太と由美子。
3人でとった昼食の席でのあの涙が、今思えば始まりだったのかもしれない。

 

 

 

 

 


続く?

 

 

 

 

 

It’s easy as pie.

 

 

あのさ、覚えたばかりの言葉をやたら使いたがる男っていない?

ほら、あの彼、いるでしょう。

ちょっと知的レベル高いって自分では思っているけど、マイルドヤンキーっていうの?その域をぜんぜん出てないあの人、、、名前なんだっけ?

あ!そうそう!それだ!レオン!あははは!

「俺のことレオンって呼んで」っていう人!本名渡辺だったよね。渡辺新太郎。

レオンって・・・色々どうしようもない感すごいよね、なんか。

でね、

そのレオンこと新太郎がね、こないだのキャンプイベントあったでしょう。

なんかアウトドア好きみたいでね、やたらはりきってて。

そこでね、なんだか知らないんだけど、ことあるごとに言ってたのが、

「It’s easy as pie!」

って。

なんかね、パイを食べるくらい簡単みたいな感じっていうか、

朝飯前だよ!みたいな意味らしいんだけどさ。

もうね、、、しつこくて。とにかく。

知らない言葉だから、一回くらいはさ「それ、どんな意味?」とか聞くでしょ?

そのやりとり自体は、全然いいじゃん。

でもさ、あんまりしつこいのって、辛くなってこない?

だって、テントたてるのも、火を起こすのも、

とにかくもう、ふたこと目には「It’s easy as pie!」って。

最後のほうは私たちの中で『パイ将軍』ってあだ名ついてたもん!あはは!

「そもそも日本人の彼はパイを食べる習慣ないでしょ!」

ってみんなツッコミ入れてたよ。

あー。笑ったよ。ほんと。

だから、それも含めて、楽しいイベントだったのかもしれない。

彼には私たち感謝しなきゃいけないのかもねー。

あ、そうそう。そういえばさ、

私たちは彼とは距離を置いてたけど、女子のグループの中には

彼と初対面の人たちもいてさ。

どんな距離感かまだつかめてないから、やたらとおだてててさ。

キャバクラさしすせそ、フル活用!みたいな感じで。そうそう。

なんだっけ、

≪さ≫すがー

≪し≫らなかったー

≪す≫ごーい

≪せ≫ンスあるよねー

≪そ≫うなんだー

だっけ?

そしたらさ、もうまんまと。まんまと、って感じだったよね?

こっちが見てられないくらい調子のりまくっちゃってたもんね、レオンこと新太郎は。あははは!

はー。おもしろ。

もう、あんたの攻略がなによりも一番、It’s easy as pie!!!

 

 

ねだる

 

 

 

 

「人はいつだって、ないものをねだるってホントだよね」




このお姉さんは、ラブホテルの中でしか本音っぽいことを喋らないので、僕は話の腰を折らないよう、黙って聞いている




「君は知ってる?ねだるっていう漢字。強く請うって書くんだよ」






光の遮られたここでは分からないけれど
おそらく外は強い西陽に赤く照らされながら風になびくすすきと

うろこ雲を散りばめた秋の青空が広がってることだろう

 

 

 

初デート

 

 

うん、そう、前に佳奈ちゃんと一緒に行った3対3の合コンの時の。
うん、そう、あのメガネで背高くて一番左にいた人、うん。


デート今日したんだけどね、はぁ…


まず20分遅れてきてね。
うん、でもそれ自体は構わなかったの、私も遅れることあるし。


でもそもそもね、デート誘ったのもね、場所指定したのも彼のほうだってのもちょっとあるし、
何よりね、遅れた時さ、謝罪とかまで言うつもりはもちろんないんだけど、なんかこう、反省してるの見せてくれるとかさ…ううん、ホントちょっとでいいんだよ、だってこっちも許したいじゃない?


デート始まるのこれからなんだもん。楽しくしたいしさ…
でもね、彼、第一声からね、まず文句なの。


バスが遅れたのとかは仕方ないことだよ?
でも先にね「ほんっとにゴメンね!」とか一言でも言ってくれたら、それで良かったのに…


でね、お互いの仕事終わってからの待ち合わせだったから、
その時もう8時で、私お腹すいてたんだ。


だから、ごはん食べに行きたかったのね。
場所を指定してきたのが彼だったから、予約とってるまでは期待してたわけじゃないけど、
お店の見当くらいはつけてると思ったの。私あつかましいかな?でもそう思うよね普通?


そしたらね、はなまるうどん行こうとか言うのね。


「俺、丸亀製麺よりはなまるのダシが好きなんだ」
とか言って。いや、うどん、美味しいよ?なんなら私も好きだよ、はなまるうどん


でもさ、初めてのデートだよ?そこで、かけうどん130円はちょっと淋しすぎって思ってもいいよね?私今年29だよ?なんならその彼30だよ?
しかも、私の反応を待つまでもなく、はなまるうどん探し出しちゃってね…


でもやっぱりそれはあんまりだと思ったから、
待ち合わせの場所から5分くらい歩いたら私の知ってるお店あること思い出して、そこ行こうって言ったのね?


そしたら、「それなら俺も並木地区にいい店知ってるから、そこ行こう」って…


並木地区だよ?
そこから歩いたら50分くらいかかるんだよ?


しかも
「この距離でタクシーもったいないから喋りながら歩こう、俺歩くの好きなんだ」
とか言い出してね。


私ヒールだよ?
しかもお腹空いてるって何度も言ったんだよ?私。
ランチ軽くしか食べてなかったから、本当にお腹空いてて。


それに、そんなやりとりしてたら、その時点でもう8時半くらいになってるんだよ。
私なんだかちょっとイライラしてきちゃって、結構強引にその歩いて5分の知ってるお店に連れてったのね。


で、お店入って、喋り始めたんだけど、話がね、その、すっごくつまんなくて…


食事始める前段階までの印象がすでにさ、だいぶ良くないでしょう?
だから、そのせいかなぁとも一瞬思ったんだけどね、


「…あ、知ってる?三角形の内角が180度ってね、実は証明されてないんだよ!」
とか、そんな話ばっかりなの、ホントに。


いや、話してくれるのは助かるよ、うん、助かるけど、びっくりするくらい興味ないことばっかりでね…
スカイラインスカイラインGTRの違い、とかずっと喋ってたよ…
私、相槌を打つのも辛くなってきちゃって、後半ほとんど無視してたと思う…

 

あ、今その彼からメール来た!…あそうだ思い出した。
今メールアドレスに来たんだけど、その理由も話していい?


彼、LINEやってないって言うのね。いや、それ自体は別にいいと思うんだよ?でもね、
「連絡取りたいから、カカオトークのアプリ入れてよ、俺カカオトークしかやってないから」とか言ってくるんだよ。


…なんでそんなの入らなきゃいけないの?
誰がやってるのカカオトークとか?
私のまわりに誰もいないよ、少なくとも。


そもそも、なんでそんな印象最悪の人のためにね、私がカカオトーク入れなきゃなんないんだろって思…
いや、こんな風に思うの良くないってわかってるよ?でもその流れだとそう思っちゃうじゃない!


私だって、合コンの時に、ちょっといいなって思ったからデート行ったんだし、
譲れるとこは譲りたいくらいの気持ちはあったよ?


でももう、どうしても無理だったから、じゃあメールアドレスに、ってことになって。
久しぶりだよ、人に携帯のメールアドレスなんて教えたの。

 

ちょっと待ってね、メール何て書いてあるんだろ…

 


『今日はありがとう!お店もなかなかいい店だったね。
でも今度は俺のオススメのお店行こう!今日は遥ちゃんの連れてったお店なのに俺が奢ったから、次、俺の連れてくお店では遥ちゃんが奢ってね!ww また連絡するね』

 

 


…なにこの人ー!!!
なんなの!この人なんなの!?ヤダもー!
なにこの奢ってあげたアピール!あぁ私もうダメだ…気持ち悪い。wwとか何…だめ、笑えない、全然笑えないよ私!また連絡して来ないで欲しい!!

 

佳奈ちゃんゴメンね…もう電話切って寝るよ私。疲れちゃったかも。
うん、寝て忘れることにする。話聞いてくれてありがとね、あぁもう無理。私ムリこの人。あーダメだ。

 

あー
普通でいいのに…
こっちだってもう20代後半なんだから、高望みなんてしてるつもりないのに…
普通の男の人でいいんだけどな、それも贅沢なのかな…
あー…うん。寝よう。寝る。

 

おやすみなさい。はー

 

 

陽だまり

 

 


「自分が価値のある人間かどうかだなんて、
 80過ぎたこの年になったって、分かりゃしねいよお。
 だから、いいんだ。お前さんもそのまんまで。」


おばあちゃんはそう言うと、
さりげなくチョキにした指を、

「火の国熊本!!!」

と突然叫びながら、僕の両目に突っ込んだ。


その衝撃で、
僕の肛門に入れてあったゴルフボールが
夕陽の射す縁側に転がった。

 


気がつくと、僕の顔の上で、
家族が顔をのぞかせていた。

「あ、気がついた」

「よし、母さん。あのレンコンにからしを詰めてくれ」

「はいはい。ジャスミンのつぼみは、夕方に開きはじめますからね」

 


僕はうつろな意識の中で、

(そうか。思い出をたくさん作るのが、人の一生なのか)

と、少しだけ何かが分かった気がした。

 

いっぱい

 

 

 

 


「昔流行ったろ?元“弁当男子”だからさ俺。まかせてよ」


私は会社で毎日、夫の作った弁当を広げる


「いいんだよ。作るの楽しいんだ」


前の夫に暴力を振るわれ続けた話をしてしまったせいだろうか

そのせいで哀れな女に思われて優しくされているのかと

疑ったりもした

 

そんな私の疑心なぞおかまいなしに、夫はただただ明るく、私に優しかった

 

夫の作る弁当は、濃い味付けの好きな私には少し薄かったけれど、弁当箱を開けた瞬間に分かるほど、それには愛情が詰まっているのが分かった

 


年老いた両親や兄弟、仲良しの友人数人は、前夫との暴力の事を知っている分、今の夫をとても気に入って

「よかった。本当によかった」

と涙を流して喜んだ

 

 

私の暗めの性格からは、夫は太陽のように見えた

 


毎日毎日、優しく、眩しい日々が続いた

 

毎日

毎日

夫は眩しく

弁当からは愛情が溢れていた

 

毎日

毎日

幸せは続いて

夫はずっと明るくて

 

 

ある日私の心は
いっぱいになった


何かで、いっぱいになった

 


何かでいっぱいになった私は
誰もいなくなったお昼休みの社内で

 

夫が作った弁当の中身を
ゴミ箱に捨てていた

 

 

メンタルエイズ

今は、男が弱い時代らしい。


僕はといえば、流行りものに敏感だからか
はたまた自分がないからなのか分からないけれど
もれなく弱い。


特に精神的に弱いらしい。
親にも、先生にも言われ続けてきた。



学生の頃、陸上の大会に出場して、競技場の個室トイレでうんこをしていたら

他校の生徒達がトイレに入ってきて僕の事を喋ってるのが聴こえてきた。



「西高のアイツ、練習はいいけど本番いつも大したことないから大丈夫。うち勝てるぜ」


本番。
その予言通り、僕は負けた。




そのうち、そんな弱い僕にも、恋人ができた。
僕を信じて、好いてくれた。

でも僕は恋人を信じることができずに、裏切った。
(何故か裏切った僕の方が号泣して、彼女を呆れさせた)



また、恋人ができた。
今度は心をまっすぐに覚悟を決め、彼女を信じた。

すると今度は、気持ちのいいほどにスッパリ裏切られた。


またまた恋人ができた。
一緒に暮らすようになり、社会人としても、真面目に働いた。
つもりだったが、頑張りすぎたのか無気力になり会社に行けなくなった。

1週間ぶりに事情を話しに会社に行ったら、その時付けでクビになった。
呆然としたまま会社から出て、とりあえずメールチェックすると、

恋人からメールが入っていた。

『本当は最初から、あまり好きじゃありませんでした。ごめんなさい別れます』

 

急いで家に戻ると、引越しは完全に終わっていた。


ショックのあまり立てなくなりそうだったが、すがる思いでなんとか病院に行くと
真面目に見えるけれど、心の奥にただならぬ性癖を秘めてそうな、50歳前後の男性医師が言った。

エイズです。」


・・・・・え?


「いえ、と言ってもHIVの方ではなくて、通称メンタルエイズと呼ばれてる症例です。
そして、気をつけて欲しいことがあります。

あなたの心、つまり脳が今後、再び何らかの外的要因で傷ついた場合には、もうご自身でその傷を止めることはできません。」


・・・はぁ


「なので、今後は傷つかないように生活して下さい。なにしろ、ストレートに命に関わりますから。」










病院からの帰り道に適当に服を買い、明日からはもう会社に行く必要がないので、着ていたスーツをゴミ箱に捨てた。


スマホは、ホームレスのおっさんにあげた。


その日から
家族や少ない友人たちにも、僕の居場所は分からない。





ついでに言うと、ここが一体どこなのか僕自信もよく分かってない。




ただ一つ言えることは、毎日が平穏なこと。
だってこうして僕はまだ生きてるのだし。

 

 

 

 

ホーリーナイト

 
 
 

君が
最後にうんこを漏らしたのは
いつだったかな


と、そんな冒頭の小説を、僕はまだ見たことは無いが

小学生の頃
「がまんだ がまんだ うんちっち」
という絵本なら読んだことがある。


小学生が下校のさなか
紆余曲折を経つつ

ただひらすらうんこをガマンするという少年的ロマネスク(?)を感じられるその絵本は、

短編ながらも緊迫感あふれるスペクタクルな仕上がりになっており、


当時ヒマさえあればうんこを漏らしていた僕にとってのまさにバイブ、もとい、バイブルであった。



小学生男子にとって、うんことは特別なものであり、それが成長しやがて成人男性となっても、

うんこにまつわるストーリーのひとつやふたつ、ユーモラスかつキュートに話すことができなければ、

今や会社の面接にだって受からない。



そんな現代社会なのであるから当然、言わずと知れたフリー百科事典のWikipediaにだって、

うんこは載っている。



以下、ウィキペディアより抜粋すると、


【糞(くそ、ふん。くそは「屎」とも表記)とは、動物の排泄物のうち消化管から排泄されるもの。


糞便、大便、(俗に)うんこ、うんち、ばばや、大便から転じ大とも呼ばれる。


(うんこ、くそについては)転じて、
取るに足らない物、無意味な物、役立たない物、不必要な物を指して、このように形容する場合もある。】




うむ。

身近でありながらそして深いのである。

うんことは。



そしてその深さ(肥溜め的なやつ)は、
その後に続く目次を見ているうちに気が付けばズブズブと、僕らの腰までずっぽりと嵌めてゆく。


以下、僕が好きな項目を抜粋させてもらいたい。



【形】
に始まり、

【糞の利用】
【飼料・食糧としての利用】

ときて、

【目印・確認用としての利用】

あたりからは、なんだか笑顔さえ浮かんでくる。


たたみかけるようにして、

【慣用句としての糞】
【糞と名の付く食べ物】
【糞から「ウンコ」へ。その語源】
【「うんこ」と「うんち」の違い】


と、もうどうでもいいところまで、延々とうんこにまつわる説明は続き、糞フリーク(糞フレークではない)のぼくらを飽きさせることがない。



ここまできたら、もう最後までイかせてもらうと、

【文化面から見た糞】
【糞に関する注意点】
【糞と社会問題】

そして

【糞尿だらけだったパリ 】

と、花の都パリでさえ、とどのつまり、

うんこなのだ。



目次からして、すでにこれであるから、うんこの深さ、感じていただけたことと思う。




さて、ここで話をいったん冒頭に戻そう。
僕は今回のこの日記を
「君が、最後にうんちを漏らしたのは、いつだったかな」
という文から始めた。
これには、だいぶまわりくどい回り道をしたが、
ちゃんと意味があったのだ。





つまり、僕は今、うんこを漏らしている。




「またぁ、ネタ書いちゃって」


と、思う方もいるかと思うが、

そこは本人としても残念というか、

もう無念の極みとしか言いようが無いのだが、

本当である。



思い起こせば25歳のころ、

(これはマトモな社会人男性ならば誰もが必ず、百人中百人が通るべき道であるはずだと思うが)
“ひとりうんこ我慢ゲーム”の、車運転中バージョンをして遊んでいて計算ミスを犯し、座高が少し高くなってしまった、

あの時以来の失態である。


ここまでの長い文を書いてきて、

その冒頭からずっと僕のこの、愛用のボクサーパンツの中には、うんこが入っているのだ。



UNKO IN THEパンツ。



いま僕が誰かに、

「くそったれ!」と言われれば、

「はい、そうです」と言うほかない。


志村けんっぽく、言うほかない。




「早くトイレ行け!」と思った方、

ちょっと待ってほしい。


うんこをインザパンツしながら、こうして全世界に向けてライティングしている、僕の男としてのこのスピリッツを、無にしないでほしい。



そりゃ、感触だって最悪だし、うんこの匂いもする。


でも、屁だと思ったんだ。本当だ。


一応、疑いもしたし、慎重に出した。

だけどうんこだったんだ。

もうどうしようもなかった。


過去は過去、と僕は自分に言い聞かせて、

UNKOインザパンツで、スイッチオンザパソコンした。


その気持ちだけ汲み取ってもらえたら嬉しい。

僕のうんこは汲み取らなくていい。


それは僕が責任を持って事にあたるし、
おしりだってちゃんと拭くつもりだ。






ここまでついてきてくれて、どうもありがとう。

僕はこれから色々とやらないといけない事があるから、

そろそろ行くよ。



そして最後に僕からみんなへうんこを込めて、

アメリカの俗語で、直訳すれば(聖なる糞)となる

激しい驚きを示すこの言葉を叫んで、この記事の締めくくりとして、終わりたいと思う。

いや、終わりにさせてください、おしり気持ち悪いんで。



Holy shit!!!

Thank you!!!!!

あの日に置いてきた

 

 

 

ギターといえば、まだエレキではなかった


アコギなんて言葉もまだない頃
僕はアコギをもらった


ポロン


よく
「女の子にモテたくて始めたんですよ、よくあるやつです。そしたら何時の間にかキャリアばかり長くなってしまって…」

なんて
ミュージシャンのインタビューによくあるけど


動機は同じでも
そこまでの情熱すら持てない僕は

ただ
アコギをポロポロ鳴らすだけで
コードを覚える気すら無かった

 

 


ユミちゃんは
そうして何年も放置されていた僕のアコギを弾いた

 

 

美人ではないかもしれないけど
肌が白くて
ミッキーマウスのマネが得意という、ちょっとあざとくて、

でも可愛らしい娘だった

 

ユミちゃんが弾いた僕のアコギは
急に魅力的になったように思えた


だから僕は
アコギをプレゼントした


「ホントにいいの?」


そう何度も繰り返して
とても喜んでくれた

 

 

ユミちゃんの事が好きだったのかどうか
僕は今でもよく分からない

でもセックスはしたし
一緒に花火もした

 

ユミちゃんは
「あたしたちって、どういう関係なの?」
と聞いていた

何て答えたかは覚えてない

 

 

 


一瞬の季節だった
ユミちゃんは他の誰かと結婚したらしい


なんでもないそんなあの頃を
僕はふいに思い出していた

 

 

 

 


プルルル…


プルルル…

 

 

 

「あ、もしもし?母さん?オレだよ、オレ…うん、実はさ…」

 

 

ワンルームの仕事場に無数に横たわる携帯電話の中

僕は今日も一日中電話をかけまくる

 

その携帯電話の一つを横目に見ると


ユミちゃんと連絡を取り合っていた
あの頃の携帯電話に似てる気がした

 

 

 

なつのさくぶん

 

 


【きょう、おもったこと】


3ねん1くみ いいもり ゆうた

 

きょう、ぼくはふと思いました。

 

隣のせきの、なかよしの揚子江くんに


「そんなのこうすればいいんだよ。」

とか


「それはきっと、わからないのが普通だから、
思うようにしてみるしかないんじゃないかなぁ?
しっぱいしない方がおかしいんだから、そんなやり方で大丈夫だと思うよ。
揚子江くんはまちがってないよ。」


なんて
分かったようなことをぼくは、ほざきます。


だけど人には言えるのに
意外とぼくが似たようなことにぶちあたった時には
その局面が打破できないです。


それにふと気づいた感じです。

 

だから僕はこれから、

なにか答えが無いようなものに困ったら
隣のせきの揚子江くんに言ってあげるように

ぼくがぼくにアドバイスをしてあげようとおもいます。


おわり

 

 

 


【せんせいから】

 

ゆうたくんは

どんな家庭環境で育っているのかが、

とりあえず先生は興味津々です。


そして、(今日)とか、

3年生が書けるはずの漢字が書けなかったと思ったら、

(隣)とか、揚子江くんの漢字が書けたり、

ですます調で書いていたと思いきや、

(ぶちあたる)とか(ほざく)とか言う表現が出てきたりと、

ちょっと色んなムラがあるのが、やんちゃなところかな。

 

あとは、(局面を打破)という言い方とかを

どこからおぼえてくるのかとか、

そんなところも気になります。

 

ところで、
先生からひとつ、聞いてもいいですか?


ゆうたくんは一番後ろの一人の席だから隣は誰もいないし、


揚子江くんという子は、クラスにはいませんよね?

 

ガリガリ君CM2015夏

 

 

 

「考えすぎたら、疲れちゃう。」


友達がぽつりと、僕に言った。


「そんなの当たり前と思うかもしれないけど、

脳はダムみたいなものだから、

考えすぎて水が溜まればいつかは決壊しちゃうんだ。」

 

その時僕は、よく意味が分からなかった。

今思えば、僕のダムは、まだまだいっぱいじゃなかったんだ。

 

それからすぐ、その友達は死んじゃった。

 

僕は少し大きくなり、あの時友達が言っていたことが、

すこしだけ分かってきた。


彼ほどではないにしろ、たくましくなかったみたいだ。


僕の脳にも今では、あの時の彼とおんなじ水が、たくさん溜まっている。

 


サクッ

 


「・・・・・おいしい」

 

ガーリガーリー
ガーリガーリー
ガーリガーリー

 

 

 

チョコレート戦争

 

 

今日、仲良しだった友達が


「あいつは暗いからキライ」


って僕のことを言ってるのを聞いたんだ

 

確かに僕は明るくないと思う

でも、楽しいことは好きなんだ


だけど、どうやってみんなの中で

笑っていたらいいか、分からなくなっちゃったんだ

 

だけど僕にはチョコレートがある

チョコレートをお腹いっぱい食べれば

たいていのことは甘さの中にかき消されてしまうから

 

ひとりぼっちは淋しいよ

でも僕には友達を作る力はもうないんだ


両親は優しいけれど、

それを解決してくれるなんて、思ってないよ

もう何かに期待するのも疲れちゃったんだ

 

学校にいくのはもう嫌だな

でも、こんな僕が社会人になんてなれるのかな


親の世話になるのも嫌だな

でも、僕には自信がこれっぽっちもないんだ

 

僕は病気なのかな

いっそ病気だったらいいな

それなら希望がもてるから


ああもうチョコレートが無くなっちゃった

また買いにいかなくちゃ


世の中のみんなは本当に、

みんなマトモに生きているのかな

僕には信じられない


外に出て見るお店の人や、働いてるひとは

すごくマトモに生きているように見える

それが普通なの?

どうしたらそんな風になれるのかな

 

だって僕には、闇しか見えない

みんなには、何が見えているの?

暗闇の中に吸い込まれていく恐怖に

狂いそうになるのを、いつもじっと耐えてるだけ

 

僕の逃げ道は、チョコレートだけ

おかしいですか?

おかしければ笑ってください

笑われても、僕はなんにも感じませんから

 

 

 

 

 

 


今日で、チョコレートを買うお金が尽きました

あいかわらず、僕には闇しか見えません

でも僕は、チョコレートがなければすぐにでも

目の前の闇にのまれて狂って死んでしまうので


働くことにしました


すごく恐いけど、闇にのまれるのはもっと恐いので

仕方ありません

僕にはチョコレートを買うお金が必要なんです


学校は、やめました

友達だったみんなは、僕がアルバイトをしているのを見たら

馬鹿にするかもしれません

せっかく有名な学校に入ったのに、と


大きな組織に就職しなかったらいけないと、みんな言っていました

じゃあ僕は今、いけない人なんでしょうか?

僕にはこれでも精一杯です


アルバイト中にたまにぶつけられる悪意だけでも

どうにかなりそうです


でも、チョコレートを買うお金が入ると

とても充実感がありました

僕は小さい人間ですか?

もしそうなら、もうそれで構いません


僕の今は、生きるか死ぬかの二択しかありませんから


生きることも、死ぬことも、とっても身近です

 

 

 

 

 

「チョコレートが好きなの?」

休憩時間、チョコレートばかり食べている僕に

そういって話しかけてきた女の子がいました


「はい。ほとんどチョコレートしか食べないです」

と言うと、女の子は笑いました

その笑顔がとても可愛くて

僕はその女の子が少し、好きになりました


カラッポの僕の人生の中に入ってきたその女の子は

たちまち僕の中をいっぱいにしました

気持ち悪いですか?

でも、僕にとってその女の子の存在は、

生きるか死ぬか二択だけの今までとは違う、人生の厚みでした


一人で考えれば考えるほど、

相手の女の子がどう思っているかに関係なく

僕の想いだけがふくらんでいきました


アルバイトの終わる時間が

その女の子と重なったある日、

すこしだけ話しをしました


僕は勇気を出して、

君のことが好きです、と言いました


女の子は

「嬉しいけど・・・ごめん」

と言いました


嬉しくなさそうでした


勝手に盛り上がっていた自分に気付いて

僕は反省しました


「いえ、こっちこそ、ごめんなさい」

そう言って、僕は彼女に謝りました

 

すごく反省して、すごく恥ずかしくなりましたが、

不思議と、暗い気分にはなりませんでした


女の子は、気まずそうに帰りました


僕はしばらく、そこに立っていました


ポケットに入れていたチョコレートは

少しやわらかくなっていました